Michael Brecker
Report from Tokyo Jazz 2002

東京JAZZ2002 at 東京スタジアム 2002.8.24 - 25

久々の新しい大型ジャズイベント、東京JAZZ2002が2日間にわたって、東京スタジアムで行われた。ハービー・ハンコックウェイン・ショーターのバンドに加え、スペシャル・ゲストとしてマイケル・ブレッカーが来日し、24日、25日の両日ともにそれぞれ「Invitation to Cuba」、「Meet the Future」と銘打たれたスペシャル・セッションに出演した。短い出番ながらも密度の濃い演奏を聞かせてくれ、特に24日に演奏された「Directions in Music」にも収録されていたマイケルのソロでの「Naima」は入魂の演奏だった。

そのマイケル・ブレッカーに24日、25日両日にわたって出演後の楽屋、共同記者会見や打上げパーティーの席上で話を聞くことができたので、その内容をまとめてお届けします。


共同記者会見でのマイケル

東京スタジアムという大きな会場での演奏について聞いてみた。

Michael Brecker (以下MB)
ジャズをするには大きすぎるかな。1日目はちょっととまどったね。2日目は会場の音響にも慣れてうまくプレイすることができた。できたら2日目に1日目の曲目を演奏できたらよかったんだけどね。

(1日目はマイケルをメインでフィーチャーした曲が上述「Naima」を含め2曲あったが、2日目は大セッションバンドの中の一員としての演奏のみだった。)

大会場といえば、いままで演奏したことがある一番大きな会場はポール・サイモンのバンドでのニューヨークのセントラル・パークのコンサートで70万人も観客がいた。

(このコンサートにはスティーブ・ガッドや今は亡きリチャード・ティーも参加し「Live in Central Park」としてCDとビデオになっている。)

1日目の「Naima」の演奏はイントロ部分でうまく会場の残響を利用してプレイされてるように聞こえましたけど、意識してやっていたのですか?

MB
いや、特に意識はしてなかったよ。でもエコーを聞きながら無意識に合わせていたのかもしれないな。

2日目は久々にEWIを演奏されていましたが、どうでしたか?

MB
実はあまり自分の音がよく聞こえなかったんだ。でもちょっと聞こえた部分ではまあまあだったと思うよ。EWI自体はAKAIの従来のモデルを使っているんだけど、音源モジュールの方を全てデジタル化してプログラムをやり直しているところなんだ。


今回は東京JAZZのメンバーが発表された時は、てっきりマイルス・コルトレーンへのトリビュート・プロジェクトの「Directions in Music」のプログラムが演奏されるのかと思っていたら違ったのですね。ジョン・パティトゥッチ、ブライアン・ブレイドもいるしロイ・ハーグローヴ以外は全員のメンバーが揃ってますよね。

EWIを吹くマイケル
MB
実は僕も最初は「Directions in Music」をやるんだと思ってたんだ。でもちょっと事情があって今回の東京JAZZではトランペットはロイ・ハーグローヴじゃなくて、ニルス・ペッター・モルヴェルが前面にフィーチャーされることになったんで、「Directions in Music」ではなくなったんだ。おかげで、僕の演奏する場面は少なくなってしまったけどね。

でも「Directions in Music」 では来年の2月にやってくるよ。ブライアン・ブレイドの予定が合わなかったのでドラムは代りにロイ・ハーグローヴのバンドのドラマーが参加することになっている。


「Directions in Music」 日本公演予定
2003.2.18(火)6:30 p.m. 東京国際フォーラム・ホールA
2003.2.19(水)6:30 p.m. 大阪フェスティバルホール


今回の東京JAZZはハービー・ハンコックが総合プロデューサーを務めていましたが、いかがでしたか?

MB
ハービーはいつもマジックを作り出してくれる。2日目のセッション(「Meet the Future」)はその例だよね。演奏の当日まで何も決めていなくて何の曲やるかも聞いていなくて、リハーサルも通しでは一度もやらなかったんだけど、本番はしっかりとまとめあげたよね。

ハービーはいつもそんな感じで、あまり決め事をしないんだけど、それと正反対なのが、チック・コリアだ。一音一音全て綿密にアレンジが決められている。実はこの東京JAZZが終わったらすぐに(8月28日)にロスアンゼルスのハリウッドボウルでチック・コリアのバンドでアイアートフローラ・プリムと一緒に「スペイン」を演奏することになっているんだけど、そのアレンジがかなり複雑で大変なんだ。

(マイケルはこの「スペイン」のことがかなり気にかかっていたのか、24日に会ったときも25日に会ったときも2日とも変態アレンジされたスペインのテーマを口ずさんでくれた。)

「スペイン」は今まで演奏したことはあるのですか?

MB 何度かあるよ。実は70年代に何度かチックのバンドに加わってライブをしたことがあるんだ。ジョー・ファレルの代わりとしてね。

(ということは70年代にマイケル・ブレッカー参加でリターン・トゥ・フォーエヴァーはライブを何度かしていたということらしい。一度目の前で見てみたかったものだ。)

今回競演したウェイン・ショーターについてコメントをもらえますか?
寺井尚子・マイケル・ブレッカー・ウォレス・ルーニー
マイケルとウェイン・ショーター

MB
ウェインは偉大だよ。彼が健康な状態でこうして一緒にステージにいてくれるだけですばらしい。彼は偉大な創造力を持っているし、一定のゾーンを決めて演奏を集中させていくのはすばらしい。彼はマスター・ミュージシャンだ。


今、ステージでキューバのOMARA PORTUONDOが演奏を始めましたけど、一緒に吹きに行ったらどうですか?。

MB
本物のノリだよね。でも僕は実はサルサのクラーベのリズムに合わせて吹くのはうまくできないんだよ。あれをマスターするのには何年もの時間がかかるよ。

(マイケルにも苦手なジャンルがあったとは意外な発言だったが、もちろん苦手と言っても非常に高度なレベルでの話で普通のミュージシャン以上のレベルで演奏できるのは間違いないだろうが。)


今回はマウスピースはメタルを使っていたんですか?

MB
そうだ。基本的にはメタルのマウスピースを使っている。ラバーも使うことはあるんだけど、時々だね。


次回、日本にこられるのは10月の富士通コンコードですね。

MB
ジョーイ・カルデラッツォ、クリス・ミン・ドーキー、ジェフ・ワッツとのカルテットに兄のランディーがゲストとして加わる予定だ。でもまだどんな曲をやるかは決めてないんだ。富士通コンコードは東京や大阪以外の地方の小さな会場を回るからそういう会場では客層がいつもと違うんだよね。東京などよりも年配のお客さんが多いんだ。「Take The A Train」でもやるかな。それとも年寄り向けってことでブレッカー・ブラザーズでもやるか。(笑)

マイケル・ブレッカーハービー・ハンコックとマイケル

今回は8月22日に来日し26日には28日のハリウッドでのチック・コリアとの競演のためにとんぼ帰りで帰国というせわしない日程の中で、なおかつリハーサルの時間も短いというハンデのあるコンディションの中での演奏だったと思うが、そんな状況でも吹き始めの一音目から2万人近い聴衆をひきつける音を出していたのは、さすがだった。10月の富士通コンコードでは一部の地方公演でしかブレッカー・カルテットのみのプログラムが組まれていないため、たっぷりとマイケルの演奏が聞けるのは来年の2月の「Directions in Music」 の来日までお預けになってしまいそうだが、今回の「Naima」のソロ演奏はその予告編として十分に期待を持たせてくれるものだった。2月の来日公演が今から楽しみだ。(橋 雅人)



過去のマイケル・ブレッカー関連の記事

Interview 2001

Live Report
1996.10.05 Yoshi's, Oakland, CA
1998.9.28 Osaka Blue Note
2000.02.26 Osaka Blue Note
2000.07.20 Montreux Jazz Festival
2001.12.15 Tokyo Blue Note

CD Review
Direction in Music Live
Nearness Of You
Time Is Of The Essence
Two Blocks From The Edge

Michael Brecker Web Site

Special Thanks to 「東京JAZZ 2002」実行委員会 and Unofficial Michael Brecker Fan Club
Interview and photography by Masato Hashi
copyright 2002 by CyberFusion