近況編 〜松本圭司のやりたい音楽とは? 
T-スクェア在籍期間をふりかえる〜


松本圭司インタビュー

近況編 〜松本圭司のやりたい音楽とは? T-スクェア在籍期間をふりかえる〜

●ツアー公演後のセッションで生まれた「トリオ・ザ・スクェア」
●音楽には光だけではなく陰がある。ぼくは陰だけでもいい
●前衛的でポップな音楽が好き
●どの曲にもソロが入っている必要があるんだろうか
●ライヴを通して楽器は1台が理想。レスポンスの速い楽器が欲しい
●ゴキゲンな音響でピアノが弾けたら幸せ
●「アナザーグリーンワールド」
●ファンからのメールが励みになった
 



●ツアー公演後のセッションから生まれた「トリオ・ザ・スクェア」

−1998年冬のライヴサポート、「スイート・アンド・ジェントル」のレコーディングがあって、春から夏にかけて全国ツアーにも参加されましたよね。

「それまでにも仕事でツアーは経験してたんです。それでも歌もののバンドだと伴奏ですから、肉体的な負担ってあんまりないんですだけど、フュージョンとかジャズは、
かなり弾きまくってないといけない。毎日演奏するのは大変だなと思いました。最初の年、すごく手が痛くなって。指先の骨が痛くなる」

−指が痛くなってくるのは、ツアーの中盤から?

「最初の5本ぐらいは大丈夫ですね。じょじょに痛くなる。最後の方は『いたい、いたい』と思いながら弾いてます。ときどき休めるように、すごく柔らかく弾いたりとか。
 シンセの方がピアノよりも、痛くなるのかもしれないですね。アクションが自然のものじゃないっていうか。それ以上強く打っても音が出ないという状況になりますよね。
 ピアノだと強く打てば、一応無限になるでしょ。バーンと弾いて全部の弦が切れるってことはない。人間としては上のほうにダイナミクスが無限につけられる。だけどシンセだと軽く弾いても強く弾いても大きな音が出る。必要じゃない力が入っちゃっているのかなあ」

−ツアーで楽しかったことは?

「終わってから飲んでいたのが楽しかったっていうのはあるかなあ」

−どこかのMCで言っていましたが、地方に行って、公演が終わってから、ピアノが置いてある小さなバーなどに飲みに行ったとか。

「そういうところに則竹さん(ドラム)とかも一緒に飲みにいって、けっこう演奏したんですよ。そういうところがあると、ぼくは元気になるんです。で、ジャズとかやって。そのときのアイデアがもとで、トリオ・ザ・スクェアがあるんですけど」

−仕事でもないのにミュージシャンが集まって、純粋に遊びで音楽を演奏するチャンスなどは、なかなかとれないんじゃないですか。

「うん、とれないですよ。だから、スタンダードのジャズとか、お互いやる機会ないでしょう。みんなフュージョンの人だから、スタンダードとか知らないと思っていたら、意外と知ってて、須藤さん(ベース)とかいろんな曲メモリーしてて『おおっ、できるんだ、この人たち』みたいな。僕がすごくジャズが好きなんですよって話は、よくしてたんですけどね」

−サックスの宮崎さんは、そのときどうしていたんですか?

「その場にいることも多かったんだけど、彼の場合楽器を持っていかないといけないのがあって、突然セッションしようということになっても楽器がなかったりしたんですよ。どちらかというと主に盛り上がっていたのが、僕と、則竹さん、須藤さんでした」
 

●音楽には光だけではなく陰がある。ぼくは陰だけでもいい

−99年夏の「スイート・アンド・ジェントル」ツアーが終わって、夏の野音で松本さんはT-スクェアに入ることが正式に決まった。「5人のT-スクェア」の卒業話が
出たのはアルバムのレコーディング前だった。すると、正式に入団してから、それほど期間をおかずに退団が決まったことになりますね。

「夏からそれまでの間、T-スクェアとしては、ほとんど活動してないんです。突然だったので、びっくりですよ。なんのために僕は入ったんだろう、って。どうして、どうした・・どうしちゃった、どうなっちゃったんだ、と思いました。それまでは、僕は安藤さんのその気持ちは知らなかったんです」

−その後、アルバム「T-スクェア」のレコーディングが行われて、2000年8月27日にT-スクェアがオフィシャルサイトで、安藤まさひろ・伊東たけしのユニットになることが発表されたわけですね。
  T-スクェアを退団するときに、ファンへの挨拶で松本さんは、T-スクェアそのものが自分にとってやりたい音楽ではないことに気がついたという内容のことを書いていましたが。

「僕にとって、音楽・・アートって、愛とか、勇気とか、そういう前向きなものだけじゃないんですよ。狂気とか、絶望とか、空虚な感じとかが含まれていないとアートとは思えない。むしろそういう暗い部分が100%であってもいいと思ってるんです」

−でも、松本さんの音楽って、明るい部分がかなり前面に出ていて、ポップだと思うんです。言われて見れば、陰の部分はもちろんあると思うんだけど、あまりわからない人がいてもおかしくないと思うんですが。

「そうなんですよ。それが悩みなんです。僕はそういう部分じゃないところを出していきたいんだけど、それがすごく難しい。はっきりいってもっと暗黒な音楽をやりたい。だけど、できない。なんでできないのか、わかりませんよね」

−ちょっとクラシックの話になっちゃうんですが、その悩みって、ドビュッシーも持っていたらしいんですよ。ドビュッシー研究家の青柳いづみこさんって方が最近言って
いることなんですが。
 ドビュッシーは印象派で、きれいな音楽の代表みたいに言われている。 だけど、彼自身はものすごくオカルトに興味があって、晩年の10年間は「アッシャー家の崩壊」っていう、ポーの怪奇小説を素材にしたオペラを書こうとしていた。
 でも、そういう狂気や恐怖の世界を音楽にするのが難しくて、結局オペラは完成できないままにドビュッシーは死んでしまったんです。きれいなものと、おどろおどろしいものの両立は、ドビュッシーにとっても難しかったらしくて。

「ああ、でもね。そんな僕はクラシックなんて詳しくないけど、ドビュッシーの有名な曲で、月の光だとか、牧神の午後への前奏曲とか、ああいうのを聴いて、その『陽』と『陰』の部分は、持っていると思うけど。なにげないハーモニーとか、もっとクリアな和音を選ぶこともできたはず。僕はそう思いますし、そういうところ、好きですよ」

−そういう意味では、松本さんは、陰の部分が前面に出ていたり、含まれていたり、音楽のそうした部分を大切にしたいんですね。

「うん、とにかく、そういうのが必要だと思うんですよ。中学校のときに見てびっくりしたモンタレーポップフェスティバルのビデオ、ジミヘンがギターにオイルをかけて、燃やすんです。こわれたギターを客席に投げるっていうシーンがある。何がすごいって、ジミヘンもすごいけど、お客さんもすごい。みんな放心状態で、口をポカーンと開けて見ている。あの人たちは楽しもうと思ってコンサートに来ているのに、その結果彼らはボーゼンとしている。これはとんでもない記録なんだと思ってね」

●前衛的でポップな音楽が好き

−松本さんのファンサイトにプロフィールが書いてあって、松本さんが好きなアーティストにブライアン・イーノ、アート・リンゼイ、スティーブ・ライヒ、ギャビン・ブライアーズといった名前があがっています。
 フュージョンのリスナーには知らない人もいると思われるので、松本さんから、どんなところが好きかを含めて簡単に解説してもらえないでしょうか。

「まず、ブライアン・イーノは基本的にはロックなんです。でもそのあと、オブスキュアっていう現代音楽を扱うレーベルをたちあげて、マイケル・ナイマンとかギャビン・ブライアーズとかのCDをリリースしたんです。

 アート・リンゼイは同じくブライアン・イーノがプロデュースした、ニューヨーク・アンダーグラウンドのパンク・シーンの出身なんです。ギタリストでもあるんですけど、弦がどの弦もチューニングが合ってない。めちゃくちゃに弾くんです。でもね、最近はブラジル音楽の売れっ子プロデューサーとして有名な人。幅が広い。アート・リンゼイ自身の音楽は、ブラジルのコーナーに行けばあるかな。坂本龍一がグートっていうレーベルをやっていて、そこから日本ではリリースされているんです。教授とかとのつながりが深い人。

 スティーブ・ライヒは、売場でいうとクラシックの現代音楽のとこですね。シュトックハウゼンとかよりは、もっとポップなんですけどね。
 
 ギャビン・ブライアーズはもともとジャズの人だけど、演奏がいやになって作曲家になっちゃった。最近のアルバムはクラシックの現代音楽のコーナーにあります。和声的にはドビュッシーみたいに新しくなくて、伝統的なハーモニーを使っています。ライヒとかナイマンもそうじゃないですか。技巧はオーソドックス。発想自体がいままでなかったものというか」

−みんな、いわゆる前衛系って感じですか?

「ああ、そうかも。で、彼らはみんなポップなんですよ。アート・リンゼイとかめちゃくちゃなチューニングでギターをかき鳴らしているんだけど、すごくポップなの」

−松本さんは、前衛的でポップなものが好きなんでしょうか。

「ただ前衛的だけなのも好きですけどね。でも、メシアンとかになると『寝るぞ』って感じですけど(笑)」

●どの曲にもソロが入っている必要があるんだろうか

−T-スクェアのアルバムに入った曲みたいなのだけじゃなくて、もっと暗い曲もやりたいんですか。

「うん、でも、あのアルバムはかなりいろんなことをやったという気がしてますけどね。バラードなんだけど裏で鳴っているドラムループがひずんでいたりとか」

−「ア・ナイト・ウィズアウト・メモリー」ですね。

「うん、レコーディングだと単体で聴くでしょう。まず。じゃ、まずコンピューターから流しますっていったときに、安藤さんの曲はシンセパッドとかばーっと入ってごきげんな感じ。僕の曲は『どぅーつく、ぱーつく・・・・』(ひずんでいるドラムループを歌う)って、なんの曲を録るのかな、えっバラード!?みたいな(笑)」

−ターンテーブルなんかはあとで入れたんですか?

「そうですね、あとで僕が入れています」

−松本さんの曲って、ソロが短い印象があるんですけど。

「ジャズ系の音楽にはメロディーがあってソロがあって、というのがあると思うんだけど、僕はまず『メロディー』はポップであることの大事な要素のひとつだと思っているんですよ。で、『ソロ』っていうのがよくわからないんです。だから1曲目では、意図的にサックスのソロよりもスクラッチの方が大きくなってるんですけどね。主役はスクラッチで、サックスはおまけ」

−ソロっていうのがいまいちピンとこない?

「もちろんジャズもフュージョンも好きで、ずっと聴いてましたから、ソロっていうものはわかるんですけどね。でもいまこのご時世で『ポップな』音楽をやるときに、あえてどの曲にもソロが入っている必要はあるんだろうかと。とりあえず間奏が必要だから・・・って。メロディーだけでいいじゃん、と思うんですよ」

−トリオ・ザ・スクェアのライヴでは、ソロをいっぱい弾いてましたよね。
 「ソロ」ってものに対していろいろ考えていても、トリオでソロをやらないってわけにもいかないでしょう?

「それはあります。ソロをやらなかったら毎曲2分ぐらいで終わっちゃうからね。僕のなかではそのへんは複雑なんだけど、演奏になったらそういうことはまったく関係なくやってるという感じです。ただ、レコーディングだとそういうのは出しやすいですからね。ソロを入れなくてもいい場合もあるし。

 僕の曲で『T-スクェア』に入った『ベルファスト・ソング』ってあるでしょ。あの曲は、ソロのセクションがないんです。ピアノがちょっとやってるんだけど、ほとんど弾いてなくて、一番最後のバイオリンのソロもあんまりボリュームなくて。あの曲はメロディーしかないんです」

−あの曲はいつごろ作ったんですか?

「『ベルファスト・ソング』は21歳ごろ。『ア・ナイト・ウィズアウト・メモリー』は22歳ごろ。あと2曲はアルバムに向けて作りました」

−『T-スクェア』のためには何曲ぐらい提出したんですか?

「僕は全部で11曲出しました。昔から曲をためてて発表する機会がなかったんで、『ベルファスト・ソング』なんてそうですよ。みんなに聴いてもらえたらいいなと思って」

−曲はどうやって作るんですか。

「メロディーと伴奏が一緒にできてきます。メロディーだけがあってという状況はないですね。和音の進行とかリズムがある状態で曲を書いてます。
 まずピアノでひたすら弾いて作ります。で、1日寝かせます。翌日思い出します。忘れてたらダメだな、と。覚えていたら、はじめてそれをメモります。違うときもありますけどね。ちなみに作曲にはコンピュータは使わないのが僕のやり方ですね。

 メモるのはメロディーのちょっとしたところとか、コードネームで、そこでABサビとかできてればOK。生き残っている曲は、その段階でほとんどできてますね。最初にスーッとできたものを信じていますから。

 いま家にピアノがないのが問題で、コンピュータを使わざるを得ないんですが、これが僕のやり方ではないんです。これは仮の姿。いまはピアノだと思ってキーボードを弾いて作曲してますね。偶然早起きしてしまった日とか、朝に曲ができることとか結構ありますね。全体的に日中にできることが多いです」

−机に向かうと出てくる?

「そういうタイプですね、でも『おおっ』と思ってピアノに向かったときもあります。そういう意味でもピアノはすぐにふたがあければ使えるけど、コンピュータは立ち上げるまでには時間がかかかるのでロスがあって、難しいんですよ。あと重宝してるのはギター。鼻歌で歌いながらできますから」

●ライヴを通して楽器は1台が理想。レスポンスの速い楽器が欲しい

−ライヴでの機材で、サンプラーを使ってますよね?

「あれはDJ向けのおもちゃっぽい安いヤツなんですよ。DJが曲つなぎの間に、それにビートを入れておいてだしたり、声ネタとか仕込んでおいて出すんですよ。そういうのをバンドでもできればいいなというコンセプトでやってました。最近やってないですね。でもまたそのうちなんかやろうかな」

−あと、ライヴのときにシンセを沢山並べてないですよね。2台ぐらいで。

「僕はいっぱい並んでいないほうがスッキリして好きだし、ライヴを通して楽器は1台、1音色っていうのが理想なんです。ピアノとかオルガンだけっていうのが。ジャズだったらあるけど、なかなかそういうオファーがないんですよね。あとは、すでに頼まれたセッションでも、わざと持っていかなかったり。

 とりあえず1個の鍵盤から2個の音が出たりするのは許せないんです。鍵盤の右と左で音が違うやつとか。あとは、ふたつのキーボードを弾いていると、僕はバランスがよくわからなくなっちゃう。こっちデカいんじゃないか、こっちがデカいんじゃないかって気にしだすと、なんかダメになっちゃう。早い話、不器用なんです。

−あんまりあちこちでいろんなことをやるより、1ヶ所に集中したいっていうのはわかるような気がします。
 ただ、フュージョンにかぎらず、キーボードをいっぱい山積みしてるミュージシャンもいるでしょ。でも、松本さんはそういうタイプではないんですね。

「僕はね、(シンセを山積みするのは)80年代のスタイルだと思う。楽器をいっぱい並べて、MIDIで接続されてて、っていう。個人的には80年代の音楽は好きなんですよ。でも、僕がいま音楽をやるときに、それと同じスタイルではできないかな、というのが基本としてあって」

−じゃ、いまのスタイルってどんなのなんでしょう? 

「わかりません(笑)。ただ、90年代に入ってからアシッドジャズとかのムーヴメントがあって、ハモンドとかローズとか、古い楽器がバカ売れしたんです。僕も使ってるけど、ウーリッツァーとか。みんなが古い楽器を使うようになった。

 そうすると当然MIDIなんかついてない。それから僕が思うに、70年代はシンセも単体で1個しか音ができなかったし、音色のストア、音色をとっておけるのがなかった。つまみの設定しかなかった。ライヴとか不便だけど、そっちのほうがいいんですよ。MIDIの楽器って、なんだかレスポンスが遅いんですよ。楽器弾きとしてもどかしいです。楽器メーカーに頑張ってもらってレスポンスが生ピアノと同じぐらい速い楽器を出して欲しい。単純に音が出るまでが遅い」

松本さんの理想はピアノ?

「ピアノっていうか、生楽器だったらいいんですよ。ローズでも、ウーリッツァーでも。ちゃんと弦とかリードとか音が鳴っている場所があって、っていうのがいいなと思う。それと同じような感覚で使える電子楽器。シンセでも、そのメカニズムを把握できればいい。

  いわゆる楽器でなくていい。ラジオでもいい。選局つまみで出せるノイズをコントロールできるから、それは僕にとって楽器。バイクでもいい。ブウウウンって、音をコントロールできれば楽器。そういう発想で扱えればいいんですよ。 だけど最近のシンセは、逆にメーカーに操られているような部分がある」

−デジタルな段階とかあると、嫌なんでしょうか?

「それはありますね。でもやっぱりただレスポンスが遅いんですね。昔のシンセはデジタルでもけっこうレスポンス良かったんですけどね。なぜか。」

●ゴキゲンな音響でピアノが弾けたら幸せ

−アルバム「T-スクェア」の「テイキング・マウンテン(トップス)」って、ニューオーリンズ・スタイルの曲がありますよね。あのピアノの音色が、なんかすごくいい味出してると思うんですが、あの音色ってどうやって出すんですか?

「あのね、あの日はピアノがとてもくたびれて、チューニングが合っていなかった。それがひとつ(笑)。あとはエンジニアさんの工夫で、音をひずませてあるかな。とにかくそのとき調律はあやしい状態だったんだけど、こんな曲だし、いっか、と。あんまりきれいな音してもしょうがないし」

−あの曲のスタイルで弾くには指をどうする、といったことについては、無意識なんですか?

「ああ、スタイルが違うから、弾き方は違います。いわゆるニューオーリンズのスタイルですから。それとロックンロールでも、ジャズでも違うし。でも、指がどうなっているか、僕にはわかりません。とりあえず、叩きまくってますね。ガンガンガンガンガン、って。弾きながら『イェーイ!』って言ったり」

−ライヴハウスで生ピアノを弾くときって、他の楽器とのバランスが大変じゃないですか。私はいろんなフュージョン系のピアニストに取材することが多いんですが、み
なさん苦労しているみたいなんですよ。

「うん、ピアノって結構ライヴハウスではつらいから、どっちにしろよく聞こえないんですよね。NHKでは楽器が良くて、気持ちよくできました」

−トリオ・ザ・スクェアで出演した、セッション505の収録ですね。スタインウェイのフルコンが、すごくいい音で鳴ってましたよね。

「あんまりジャズをやるピアノじゃないかもしれなけど(クリアな音色なのでクラシック向きという意味)、僕は好きですよ。クラシック系の友達はベーゼンドルファーがいいとか、スタインウェイでもニューヨークとハンブルグで音が違うとか言ってますけど。ベーゼンドルファーも弾いたことがあるけど、僕はスタインウェイが好きです。
トリオのツアーでスタインウェイがあったのはNHKだけかな。

 スタインウェイって、タッチが違いますよね。よくわかんないですけど、シンセ的にいうと、弾いただけの音量がベーって出てくる」

−音の立ち上がりが、ぎゅっと前に詰まってる感じ?

「うん、バンド向きなピアノだとだと思いますよ。あとね、小さい頃に音楽教室に通っていたときの思い出がぴゅーって来るような、引き戻されるような感じが、スタインウェイだと起こらないの。それはデカいですよ」

−自分名義のライヴの「アナザーグリーンワールド」では、ピアノを主に弾くんですよね。他のセッションでは、どうですか?

「ギターの竹中さんとやってるセッションは、ほとんどピアノです。でも仕事によってはシンセが必要なことも多いですね」

−松本さんのシンセの演奏も大好きなんだけど、生ピアノをもっと聴きたいです。

「僕としてはゴキゲンな状態で音響でピアノが弾けて、しかもダンサブルで変態な音楽だったら、ばっちりなんですよ」

●「アナザーグリーンワールド」

−今後の活動についてですが、ソロライヴ「アナザーグリーンワールド」が10月20日に南青山のMANDALAでありますね。

「こんどのライヴは、前回までとはドラムだけが変わります。ドラムが僕と同い年の坂田学くん。あとのメンツは竹下欣伸さんがベース、大石憲一郎くんがコンピュータ、ターンテーブル、サンプラーなどなど、この4人です」

−確か前回は伊東たけしさんがゲストでしたよね?

「ええ、でも今回はゲストはないと思います」

このライヴでは、ほとんどグランドピアノを弾くんですよね。

「そうです」

−どこかで「ノイズ」みたいな音楽とか、言ってませんでしたか。

「ええ、言っていたけれど、なかなかうまくできないんですよ。ふたを開けてみてどうなるか・・・」

−前回のドラマーは則竹さんでしたけど、今回のドラマーはどんな方なんですか?

「坂田くんはロック畑かな。わりと同じことをずっと淡々とやってくれるタイプ。彼、実は坂田明さんの息子さんなんですけどね。そのせいか音色がとてもジャジー。違ったタイプのドラマーを迎えて音楽の方向が変わるかもしれない。自分の思っているものに、どんどん近づいていくと思います」

−それは、明るく爽やかな「光」の部分だけが目立つのではなく、「陰」の部分もどんどん出てくるとか、松本さんの好きな前衛的でポップな路線にさらに進んでいくと
か、そういったことですか?

「う〜ん、まだわかんないですね(笑)」

●ファンからのメールが励みになった

−今回、T-スクェアを退団されたわけですけど、松本さんとしては、T-スクェアに入って、何かいい出会いとか、ありました?
 
「それは、すばらしいお客さんです。こんなに多くの人と知り合えた。それは僕の本心です」

−お客さんとの接点って、どんなところだったんですか?

「ライヴのときもそうだし、あとは僕はメールアドレスを公開しているから、そこで。みんなはどういうつもりで送ってくれているのかわからないけど、すごい辛かったときにメールで励ましてもらったことがすごくあった」

−励みになったときって、どんなときですか。

「とりあえず、レコーディング前にT-スクェアをやめることが決まったときは辛かったな。ちょうどそのとき、高速でダンプにぶつけられて、事故をやったんです。それがT-スクェアのレコーディングに行く途中でやられて。それがダブルで来て、去年の12月は個人的にしんどかったんですが、そのときとか」

−ファンの人からのメールって、松本さんの励みにもなってるんですか。

「そうですね。これからもファンの人たちとなんらかの形でかかわっていけたらいいなと思っています」


ソロライヴの詳細については・・・
松本圭司のサイト anothergreeenworld
松本圭司ファンサイト kerossmileingreenplace

NHK-SESSION505の収録の様子が読める小川もこさんのサイト もこ's HOMEPAGE

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はじめに
プロフィール編 〜T-スクェアに入るまで〜

Interview & Text by Mime
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