In Memory of Bob Berg
ボブ・バーグ追悼特集



Bob Bergの逝去に寄せて

Bob Bergを最初に意識して聞いたのは80年代前半のMiles Davis Bandの来日時でした。復活Miles Bandの数年後にBill Evensと交代した彼が、当時Time After Timeなどのポップソングをもレパートリーに入れていたMiles BandのメンバーとしてJohn Scofieldらと共にやってきました。その時は、僕はScofieldに興味が向いていたので、正直言ってBergをさほど気に留めていませんでしたが、その後Mike SternのUpside DownsideとBerg 名義のShort Storiesで注目してから、Miles Bandでの演奏に遡って聴き直したものです。 Miles Bandでは彼はソロのスペースを十分に与えられていたとは思えず、少々窮屈そうな気配を感じます。元来彼は短いフレーズで簡潔に手際よくまとめるのでは無く、長尺のソロで思いの丈を存分に吐露するタイプと思われますので、Miles Bandではやや居心地の悪い思いをしていたのではないでしょうか。

彼の演奏の魅力は、何といってもストレートで衒いの無い、男気(おとこぎ)のテナーだと思っています。そして、ただ一本調子にストレートなのではなく、深い音楽的素養と極めて高度な技術に裏打ちされていました。ハッタリが微塵も無い演奏スタイルであり、バンドサウンドも、また同じようにストレートなものでした。ある種、不器用なプレーヤーだったとは思いますが、そこが最大の魅力だったように思います。

Milesと演奏して俄然世界的な注目を集めた時には、既に30歳を過ぎていた筈ですので、下積みが長い苦労人でしょうね。70年代にHorace Silverのバンドに参加した頃になっても、食うためにプロの運転手をやっていたようです。NYでタクシードライバーをやっていたとかトラックの運転をやっていたとか聞きます。その彼がトラックにぶつけられてしまったのはなんとも皮肉な話ですけど。 そんな下積みの苦労があった為かどうか、彼のステージングも全く衒いの無い、実質本位で直球勝負の真摯で痛快なものでした。MCは簡潔で、それでいて人柄の良さが滲み出ていました。「次の曲はドラムスのMr. WonderfulデニスをフィーチャーしたSnakesだ。まあ、もっとも俺達は全部の曲でデニスをフィーチャーしているようなものなんだけどさ、あはははは」といったような感じで。

自分自身が徐々に壮年になってきた昨今、若い頃からずっと聞き続けてきたミュージシャンが今後年老いて衰えて行くのを見守るのは辛いだろうか、などと余計な心配をしていましたが、こんな形で突然目の前から消えられてしまうよりナンボかマシです。 改めて彼の冥福を祈りたいと思います

岩間純一 (JUNIwama)




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