Earl Klugh Live Report 

1999.9.18 Blue Note 東京 1st set
  Earl Klugh (g),
  Lenny Price(sax),
  Albert Duncan(key),
  David Spradley(key),
  Al Turner (b),
  Ron Otis (ds),
  Lorenzo Brown(per)


 アール・クルーのコンサートは非常に楽しく、気持ちの良い、とても満足したものでした。
しかし、この気持ち良さを活字にして伝える事の難しさ・・・・を書き始めて強く感じてます。なぜならばLIVEで見つけた事を羅列していくと、意外な事にクルーに対する印象が一番薄いという矛盾に気付きました。それをマイナスと言うことも可能ですが、それなのに何故ここまで気持ちよいLIVEを楽しめたのかを少々考えてみたんです。

 LIVEではメンバーのそれぞれの見せ所はありました。
 パーカッションの多彩な芸は、踊りながらリズムを刻み、2枚のスプーンで細かい音を打ち鳴らし、それを箸に変えて打ち鳴らしたり、大きな木のスプーンだったり、ワイン・クーラーの缶をパーカションにしたり・・・エンターテイメントがバッチリで観客は非常に沸きました。
 また、ドラマーも細かいリズムを気持ちよく叩き、普通はうるさいドラム・ソロでもこれまた気持ちよいリズムを聞かせてくれました。ちなみに自分はドラム・セットの真ん前の席でしたが、ドラムをうるさいと思った事はこのLIVEでは一度も無く、その音楽的なドラミングに魅せられました。
 ベースシストもそれまで目立たなかったのに、ベース・ソロで中央に出てくるとスラップや細かいフレーズで、ワンパターンに陥ることなく、これまた聞かせるプレイでした。
 キーボードのソロは余り感心はしなかったのですが、それがFREEみたいに大げさなパフォーマンスで観客も沸きました。

 さて、ここまで先にサポート・メンバーの活躍を述べましたが、普通のレポートと順番は逆なのは理由があります。
 ではアール・クルー本人にいたっては、そういった沸く場面にどれくらい登場したか? 途中で気付いて注意してたのですが、アール・クルーのソロの後に拍手が起きたことはついぞ1回もありませんでした。皆、アール・クルーを見に来ているはずなのに、不思議な光景ですよね。それはクルーのプレイが不味かったというものでは決してありません。ちょっと引っ込んではいましたが・・。
 この時、友人は「やっぱりアール・クルーはライブでは無く、CDで聞くべきなんだよね」・・これにうっかり自分も納得しそうになりました。しかし、このLIVEはCDとはひと味違っていますし、LIVEならではの心地よさが存在してます。そこでその理由は何かと考えていくと、アール・クルーが一番音楽的だったのでは?・・という点に行き着きます。
 その友人の言葉が最大のヒントになったのですが、その他のメンバーのプレイはCDになったらそれほど楽しめるものだったか?・・・つまり逆説なんです。アール・クルーのプレイは非常に音楽に沿ったものであり、そのままCDで聞いたとしても心地よいプレイだった。・・・なのに沸かない理由はLIVEで必要な奇をてらった見せ物的なプレイをしなかったから。これが考えついた結論です。
 それが証拠にクルーのプレイの時は皆聞きほれて居たのではないでしょうか・・そしてそれが自然な音楽だったはずです。クルーはバリバリな早弾きなどしませんし、例えばスラップみたいな楽器テクニックのひけらかしなどもっての外・・・あくまでもメロディのプレイヤーなのだと思うんです。 すっかり心地よくなった気持ちにさせてくれたのは、LIVE特有のパフォーマンスもあるでしょうが、基本的にはアール・クルーの音楽によるところが大きい・・・・そういうLIVEだったと思います。
 
 さて、肝心のLIVE内容について述べておきましょう。
演奏された曲はなぜかまだ国内盤が発売されていない「Peculiar Situation」(輸入では発売中)と、その前作「Journey」からが中心になりました。
 オープニングはALL THROUGH THE NIGHTで華やかに始まり、PRIVATE AFFAIR、LAST SONG、I'M FALLING、ONE NIGHT ALONE、PECULIAR SITUATION、THIN ICE、4 MIN SAMBA、THE WIGGLEが演奏されました。どれを取っても気持ち良い演奏です。アール・クルーの場合、特に曲を知らなくても楽しめます。
  でも、このセットの中盤であの名盤「Finger Painting」の1曲目 DR.MACUMBAには一番沸きましたね。BN東京のHP掲載の他日のセットリストには含まれてなかったので、この曲の演奏は非常に嬉しいものでした。こういった古い曲を演奏すると、ずいぶんアール・クルーもあの当時とは音楽性が変わっているのだなという気がします。具体的に言えば、昔はギター中心にバックを付けた感じでしたが、現在はトータル的に音楽を作り、その1要素としてのギターを用いているような感じです。

 それと実は席は一番前だったため、プレイヤーの足下にあったセットリストが見えて、次にどの曲を演奏するかなんて全てわかってたんです。そこで長年の疑問が1つ解消しました。
 それはBN東京のLIVEがあまりにショウ化してるため、アンコールも事前にセットリストに入って予定されてるんじゃないか?という疑問です。
 でも、そのLIVEではセットリストに書いてある全曲を演奏して終わり、一度引っ込んでから観客のアンコールで戻って来ました。そこでクルーがメンバーに「NewYork・・」と囁くと、セットリストには書かれていないアンコール曲を演奏したんです。(その曲は何かわかりませんでしたが) そっか、アンコールって最初から予定として決まってる訳では無かったんですね。ちょっとした発見・・・今日はガンバって並んで良い席を取った甲斐がありました。(がんばったのは友人でした・・。(笑))

 それにしてにアール・クルーってステージで腰掛けて、視線を下げた時の表情がよく雑誌の写真にあるそのまんま・・・今でも少年の面影を残している人なんだな・・・と思ったのでした。(TKO)


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