パルテノン多摩サマーライブ'98 LIVE REPORT
NIACIN/FOURPLAY



パルテノン多摩サマーライブ'98
8/22 土 多摩中央公園特設水上ステージ
ナイアシン、フォープレイ


■1部:NIACIN
BILLY SEEHAN(b), JOHN NOVELLO(key), DENNIS CHEMBERS(ds)

ナイアシンのライブは初めてだったが、客席は案の定、若いファンが多かった。多分、元MR.BIGのビリー・シーン(アナウンスではシーアンと聞こえる。)が目当てなのだろう。そのナイアシンが登場すると、大きな歓声につつまれ、彼等の人気が伺われた。 しかし、演奏が始まると、その歓声どころじゃない!もう度肝をぬかれた。チェンバースのドラムは、テクニックが凄いのは頭では解っていたのだが、ライブではそのパワー、スピードで、実際に受けるインパクトというのが想像以上だった。まるで速射砲のように打ち続けるドラムは、空気を歪めてわれわれにぶつかって来るように感じて、チェンバースが叩くたびにそこいらじゅうから観客のどよめきが起こる。 

それにからむシーンのベースも、ほとんどギターと考えていいように自由奔放に縦横無尽なプレイを見せる。かなりハイ・テンションな演奏で、もう溜息を何度ついたことか。こんな凄いバンドが先だと、後から出てくるバンドは気の毒にといらぬ心配も浮かびながら、目の前に繰り広げられている演奏に食い入るように聴き入った。 

しかし、中盤から様相が変化する。こんなハイテンションな演奏のままで、最初から最後まで続くわけがない。聴く方だって、ちょっとペースの変わった曲が欲しくなる。ナイアシンだって一本調子のままで済ますはずがなく、テンポを落とした曲に変えていった。しかし、ここでテンションがドーンと落ちてしまうのだ。これは演奏のテンションが落ちたとか、手を抜いたとかいう類では全然無い。むしろ曲のペース・ダウンに伴い、聞き手のテンションがひと休みしてしまったのだと思う。それでも聴かせるものがあれば良いのだが、残念ながらナイアシンはデニチェン、シーンが止まってしまう、あるいは彼等が爆発したプレイをし続けないと、途端に面白さが失せ、聞き手も落ちついてしまう。言ってしまえば、つまらなくなってしまうのだ。その理由は、keyのつまらなさにも原因があると思う。もし、ここらでkeyがなにか見せるプレイがあれば、こういう中だるみは発生しないのだが、ちょっと力不足・・・もう少し力のあるkey奏者が欲しいところなのだが、デニチェン、シーンに対抗しうるkeyだなんて、それは酷と言う物か? それと音楽の幅が一方向のみなのだなという、狭さをどうしても露呈してしまう。KEY奏者を変えるか?、それともSAX、ギターでも入れて、バンドの幅を増すか?(どこぞのバンドみたいに。<おいおい(笑))

しかし、ライブも終盤に移り、再びデニチェン、シーンがドライブし始める。それに従ってテンションもあがり、「うんうん、これで良いのだ!」と先ほどの不満もどこへやら。(苦笑)とにかくこの2人なんだなという事で納得してしまうのでした。

■2部:FOURPLAY
LARRY CARLTON(g), BOB JAMES(key), NATHAN EAST(b), HERVEY MASON(ds)
実は新作「4」は割と気に入っている。fourplayというグループ名には「4人でのプレイ」の意味以外にも、ある”別の意味(?)”があり、それを考えると新作で聞けるサウンドというのは、単なるスムースJAZZというだけでなく、もっと実用的サウンド(?)なのかもしれない。(笑)それをライブという空間でやるとどうなるかという興味があった。 また、ご存じのように、ギタリストがリー・リトナーからラリー・カールトンに変わっての新生フォープレイのライブである。(パンフレットにあったのだが、昨年のここでのカールトン、メイソンの共演が、カールトンのフォープレイ参加に繋がったらしい。)新作でのプレイは別にギタリストが変わったからと大きな変化は無かった。それだけにこのライブではきっと違いが聞けるだろうと期待した。

まず、TVドラマでも使われていた、おなじみ「BALI RUN」で始まった。テーマ部分であのリー・リトナーと同じフレーズを弾いてると思うと少し感慨。さすがセッションもこなしてきたカールトンと思うが、やや不安定な立ち上がり。そしてソロに突入、これは完全にカールトンのフレーズが流れ出してきたが、この瞬間にもうリトナーのフォープレイは過去のものだという事がわかった。既に、カールトンのいるフォープレイとして動いているのだ。客のノリも歓声も、ナイアシンの時に負けてない。それどころかナイアシンの時よりも、もっと大勢から歓声があがっているように聞こえるし、ナイアシンの時には無かった手拍子まで起こった。若いファンが多かったのでナイアシン目当てだと思ったのだが、実はフォープレイのファンの方が多かったのか?・・・・これにはかなり驚いてしまった。

そして新作から・・・まずい、ノリが良くない。ソロもまるで歌わないし、音のバランスも危うい。まだライブ序盤という事を差し引いてたとしても、これは新作の曲はライブ向きでは無いという事がわかった。このあと旧作からの曲だけになるのだが、そちらはライブに合うようだし、バンドも曲が進むたびに調子を上げてきたようだ。どうもカールトンのギターがフューチャーされると曲もしまり、ノリがでてくるように感じる。 

カールトンが「fourplay blues!」と叫ぶと、このバンドでは珍しいブルースが演奏された。カールトンは水を得た魚のようにギターを歌いまくり、ボブのブルース・プレイも珍しいながらも板に付いている。結局このブルースがこのライブでのクライマックスになった。カールトン加入で期待してたサウンドがこれだし、次作ではこういう方向が入ったら良いな。

 最後にはナイアシン、フォープレイのメンバー全員によるセッション・プレイで1曲。まぁ、単なるソロの受け渡しのジャムセッションで大したことはないのだが、このユッタリしたリズムでの和気あいあいな中で、ナイアシンのノヴァロが今日一番のプレイをしていた。もしかしたら、ノヴァロの場合はナイアシンのとんがったプレイよりも、こういったジャムのような所でのプレイの方が本領を発揮できるのではないだろうか?

■総評
 ナイアシンの方は最初凄いカウンターを食らわされたが、中だるみがでたのが残念。でも、少々のマイナスでもおつりが十分来る凄いステージを見せてくれた。こういった目からウロコ状態のライブが年数回あったらなんて良いだろうに・・。(また来日したら、是非見に行きたいな!) 

フォープレイの方は、最初はどうなる事かと思ったが終わってみると、序盤から段々良くなっていって最後に盛り上がるようになった。流石ベテラン!ツボをこころえているのはプレイだけでなく、ライブの流れをも掌握している。(また来日したら・・・・次作を聴いてから判断しよっと。) 

また、ライブとは関係のないマナーに関して。昨年は「ライブ演奏中に携帯電話する輩」がいたり、毎年ここのライブの観客マナーの悪い所が目に付くのだが、今回は携帯に関してはコンサート事前に注意を喚起するアナウンスがあったし、開場前の列整理(いつも随分前からウダウダしてたのが、今回は短い時間でスムーズ)からゴミの分別など、格段に良くなっていた。おかげで安心してライブを楽しめた。(今回は◎ 関係者各位に拍手!)(TKO)


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