Jeff Beck Live Report




Jeff Beck (Guitar)
Tal Wilkenfeld (Bass)
Vinnie Colaiuta (Drums)
David Sancious (Keyboards)


2009.2.19 大阪厚生年金会館大ホール

1975年の「Blow By Blow」にてロックサイドからのクロスオーバー・フュージョンへの先駆者として地位を確立し、それから30年あまりの間トップ・ギタリストとしての地位に君臨し続けている孤高のギタリスト、ジェフ・ベックが来日を果たした。
2006年のUDOロックフェス以来だから3年ぶりということになる。
会場の大阪厚生年金会館大ホールはベック・ボガート&アピスとしての1973年の初来日公演の際にライブ・レコーディングを行ったゆかりの場所でもある。
今回のバンドは2007年のロンドンのライブハウスRonnie Scott’sでのライブ盤「Performing This Week」とはキーボード奏者が入れ替わっただけのメンバーで、完全ギター・インスト・バンドだ。

コンサートはこのライブ盤同様「Beck's Bolero」で幕を開ける。
1曲目からジェフのギターはアクセル全開モードで、全て指弾きにも関わらずトレモロアームでエッジの効いた音の表情をコントロールしながら、情感たっぷりのギターを聴かせてくれる。低音量時の微妙なニュアンスから、大音量の切れ味鋭いスピード感溢れるサウンドまで、今これだけギターを自分の体の一部のようにコントロールしているギタリストはいないのではないかと思えるレベルだ。

2006年の来日時もジェフとのいい相性を見せていたヴィニー・カリウタのドラムスも絶好調だ。特にビリー・コブハムのカバー曲「Stratus」でのパワフルに叩きまくるドラムスは圧巻だった。

最新ライブ盤ではミックスバランスのためか、幾分存在感が希薄に感じた売り出し中のオーストラリア出身の若手女性ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドも、カリウタとのコンビネーションは絶妙でしっかりとバンドのボトムを支えている演奏には好感が持てた。
またベースソロでは1本のベースでジェフが低音弦を演奏、タルが高音部でソロを取る珍しいベース連弾を「Freeway Jam」で披露していた。

キーボードのデビッド・サンシャスはほとんどバッキングに徹しており、ほとんど前にでてくることはなかった。

「Peter Gunn」がエンディングとなったアンコールを含めても約1時間半のステージは決して長いとは言えないが、ギターがあれば言葉は要らないとばかりにMCを一切はさまずにひたすらギターを弾き続けるジェフのギターをたっぷりと堪能できた極めて濃密な演奏だった。

伝え聞くところによると大阪に先立って行われた東京、横浜のステージも好調で、この日の大阪のステージはライブ盤となったロンドンでの演奏より出来がよいように感じた。 昔はライブでの好不調の波が大きいと言われていたジェフ・ベックだが、今回のジャパン・ツアーはどの公演も大当たりと言ってもよい出来だったようだ。
同じライブ盤との比較という意味では1977年の「with Jan Hammer Group Live(Live Wired)」と比べてもこの日のジェフのギターの方がよかったと感じるほどでもあった。
もう63歳になったジェフだが、まったくその歳を感じさせないシェイプとカッコ良さは驚きでもあった。
ジェフの長いキャリアの中でも、今まさにひとつのピークを迎えているといってもよいだろう。 (橋 雅人)





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