S.M.V.
Live Report




Thunder by S.M.V.

スタンリー・クラーク/Stanley Clarke(Bass)
マーカス・ミラー/Marcus Miller(Bass)
ヴィクター・ウッテン/Victor Wooten(Bass)
フェデリコ・ゴンザレス・ペナ/Federico Gonzalez Pena(Keyboards)
デリコ・ワトソン/Derico Watson(Drums)

2008.9.15 ビルボード・ライブ大阪 2nd set

元祖ベースの速弾き王のスタンリー・クラーク、スラップの王者マーカス・ミラー、当代きってのテクニシャン、ヴィクター・ウッテンというベースの新旧スーパー・スターが揃い踏みしたスペシャル・ユニットがS.M.V.。この夏、ユニットとしてのデビュー・アルバム「Thunder」をリリースしたばかりでの来日となった。

ステージはニュー・アルバムと同じ「Maestros de las Frecuensias Bajas」から幕を開ける。
向かって左側からスタンリー・クラーク、中央にマーカス・ミラー、そして右手にヴィクター・ウッテンと3人のベーシストが並んだ姿を見るだけでも壮観だ。 それ以外のメンバーはドラムスとキーボードの2人だけで、その2人はほとんどサポートに徹しており、まさにベースだけのためのバンドだ。始めから3人のベースソロをどんどんとフィーチャーしてステージが進んでいく。
1曲目でいきなり3人並んでスラップを同時に弾くさまはその姿、音圧だけで圧巻だ。
大音量で3人の重低音が響いてくるのはCDでは味わえないライブならではの魅力だろう。

続くニューアルバムのタイトル曲「Thunder」でも存分にベース・ソロの掛け合いを聴かせてくれる。

ステージ半ばで演奏されたマーカスのマイルス・デイビス・バンド時代の曲「TUTU」では同じくマイルス・ナンバーの「Jean Pierre」のフレースを織り交ぜながら始まりマーカスが客席に降りてきて、バス・クラリネットのソロを聴かせていた。マーカスのバスクラは今までにも何度か聴いているが、以前よりも表現力が増したように感じられた。

「Milano」ではスタンリーがウッド・ベースを持ち弓弾きでしっとりとイントロを奏でていたが、後半のソロではウッド・ベースを叩くようにスラップし、挙句のはてにまるでザ・フーのピート・タウンゼントように右手を360度回転させながら弦を叩いて客席を挑発するように盛り上げていた。

CDでも最後の曲の「Grits」で一旦幕を閉じたステージのアンコールは予想通りというかフュージョン創世記の名曲、「School Days」。 スタンリー・クラークのベースの和音弾きのあの硬質な音で、あのリフを目の前で目撃できるのはそれだけでも結構感激である。あとは観客総立ちでお約束のロックン・ロール・ベース・バトル大会でお開きとなった。

難しいこと抜きにジャズの古典的なスタイルであるバトルを前面に押し出したエンターテイメント性の高いステージで、CDと同じ曲でもCDの数倍楽しめるような演奏だった。
特にスタンリー、マーカスのエンターテイナー振りには脱帽である。
逆にウッテンは次々と小難しい技を繰り出す分まだまだ若いなという印象でもあった。 (橋 雅人)




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