Michiel Borstlap
Live Report


at Paradiso, Amsterdam
September 16, 2005



オランダのTOPピアニスト、ミケル・ボルストラップのライブを地元アムステルダムで見ることができた。
会場となったパラディッソはアムステルダムの中心部にある、普段はロックやクラブ系のライブが行われている教会のような作りの古い建物だ。中は1階が広いフロアになっていてオペラ劇場のように2階、3階の客席はフロアを取り囲むような形になっている。
開始時間は9時と遅めだったが、ライブが始まる頃には1階のフロアに置かれたテーブルと椅子の席は完全に埋まった上に後方にはかなりの立ち見客、2階の椅子席も完全に満席になって1000人近い観客が集まっていた。

バンドはアコースティック・ベースにドラムスというベーシックなトリオ編成でボーストラップのオリジナル曲が演奏されていく。MCが全てオランダ語だったので全然何を言っているかわからなかったのだが、新作「Coffee and Jazz」からの曲を中心に演奏していたようだ。
ボルストラップのピアノは軽快かつノリがよく、低音部の使い方はリチャード・ティーを連想させるようなところもあるのだが、ティーのようなR&Bやブルース臭さは全くと言っていいほどない。かといってヨーロッパ系のピアニストによくあるような暗く沈んだ雰囲気のピアノではなく、抜けた感じで高速フレーズを繰り出してくる。
またバラードでもほのぼのとした明るさを感じさせてくれる。
曲のアレンジはコンテンポラリーでいわゆる伝統的な4ビートのピアノ・トリオのサウンドとは一線を画している。

ところで会場を埋め尽くした観客、前のほうに座っている人たちは静かに真剣に聞いているのだが、後ろの立ち見の人たちは歓談でもしながら聞いていたのかかなり騒がしかった。演奏の音量が大きいときは気にならないのだが、バラードなどの音量が落ちる部分ではざわめきがかなり気になり、真剣に聞いている人たちから「しーっ」という声がかかり会場が静かになるという場面が一度ならずも何度もあったのがちょっと奇妙だった。

休憩をはさんだ2部の最初は女性ヴォーカリストがでてきてボーストラップとのデュオで1曲歌ったのだが、これがジャズ・ヴォーカルではなく、完全なクラシック系というかオペラ系の歌い方でこれには少々面食らった。これがヨーロッパということなのだろうか?

2部ではベーシスト、ドラマーのリズム・セクションが入れ替わってベースはエレキの5弦ベースとなりエレクトリック・セットとなった。ドラマーはスネアの抜けの良さとタイミングが絶妙でなかなかよかった。
これに女性トランペッター(From New Yorkと言っていたのだけがわかった)が加わり、カルテットとなり、ボーストラップはシンセを交えた演奏で、モーダルなオリジナル曲が続けて演奏された。
正直なところ女性トランペッターの力量が平凡だったのと、ボーストラップのシンセが単調に聞こえたのでこの部分の演奏は個人的には今ひとつピンとこなかった。

最後を締めくくったのはハンコックの「Cantaloupe Island」で、この曲ではテナー・サックス奏者も加わりそれまでの無機的な曲調とは一転してファンキーな演奏で会場を大いに盛り上げた。

会場のスタンディング・オベーションを受けてのアンコールはボーストラップのソロ演奏で静かに締めくくった。
まだ9月中旬とは言え北ヨーロッパはもう初秋の気配で、会場を出た11時半には気温もかなり下がっていたが、金曜の晩のアムステルダムの街は人通りも多く活気に満ちていた。 (橋 雅人)



The 1st set The 2nd set



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