KORENANOS LIVE REPORT




KORENANOS
1997年7月31日 高円寺ジロキチ


是方博邦(g)難波弘之(key)須藤満(b)則竹裕之(Dr) 今年の2月に南青山マンダラではじまったこのセッション。5月の市川CLUB GIO、南青山マンダラに引き続いて今回は是方氏のお膝元のライブハウス、ジロキチでのライブです。

ジロキチは本当にこぢんまりとしたライブハウスで、この日は座席が30、立ち見が30程度。それでも満杯でした。ベースの「お茶の間乱入」(客席に入っていってベースを弾くこと。カシオペアの鳴瀬喜博氏がよくやりますが須藤氏もやります)をする必要もないほど客席と舞台がすぐそばなのがジロキチのいいところ。
機材のチェックをごく簡単にしてみます。
是方氏は紫の是方モデル、オールドのストラト、ヤマハのアコースティックの3本。2月のインタビューでは是方モデルが中心といっていましたが、この日はストラトのほうが多く使われていました。難波氏はL字型のセッティング。客席側は3つで、一番上がPRORHECY、一番下がKORG T2。舞台側も3つのキーボードがありました。須藤氏赤のMOON、アスリートのフルアコベース、木目のフレットレス。則竹氏はチャイナシンバルが右上の一番いい位置にきて、ライドシンバルが右の低めに来ていたのが変わった点です。左のハイハットのそばにスプラッシュがあって、その上方に「リボンクラッシャー」という「ガシャッ」という音のするノイズ系パーカッションがありました。

1 UNTIL YOU COME BACK TO ME

難波氏のエレピソロから始まる、Dメジャーの軽快なミディアムテンポのシャッフル。5月にも演奏されていた曲です。ゆったりと流れるメロディーにリズム隊のちょっと跳ねた感じがリラックスした印象。やはりジロキチ、椅子から床からバスドラのみならずタムの振動までビンビン伝わってくる!!ベースも歌いまくっているのがビシビシおなかに響いてきます。本当に息づかいまで聞こえるような、そんな錯覚を覚えるくらい。はじめはしっとりした雰囲気でしたが、間奏での短いドラムソロで早くも思いっきりタムを両手打ちしたりチャイナシンバルをバシバシ!!と4つ打ちするなど、どんどんハードな世界に・・・。キーボードも負けじと木管系の音色でギンギンに盛り上げ、充分にテンションをあげた1曲目となりました。

2 スパイ大作戦

「野獣王国ライブ」にも入っているあの曲です。あたまのベースラインがすごくシャープで力強い!!!ワイルドであやしい曲の雰囲気に一気に引き込まれます。難波氏のオルガンソロのあと是方氏のギターソロが、火を吹くものすごい勢い!!!めちゃくちゃ飛ばしてました。是方氏と向き合って一心にギターを弾く手元を見つめながら歯を食いしばってベースを弾く須藤氏、額には汗がじっとり浮かんでいます。中盤以降は4人とも顔まで汗びっしょりで、本当に熱い演奏でした。

3 PINK WOLF
 
狼が吠えているような低いディストーションのきいた、ゆっくりした動きのメロディのEマイナー。遅めの8ビートで全曲を通して重量感にあふれ、シリアスさに満ちています。スケール大きく歌い上げる是方氏。淡々と弾く難波氏。必死な表情の須藤氏。一心に叩く則竹氏。サビのギターは男の人が黙って泣いているようで、胸にくるものがありました。まだCDに入っていませんが、とても印象的な曲です。

4 TEARS OF MARMAID

アコースティックギターに持ち替えた是方さんが椅子に腰掛け、ギターの長いソロから曲が始まります。ペダルで1音1音に表情が付けられ、幻想的な世界が広がります。ギターがしっとりと存分に歌い、胸がいっぱいになります。難波氏はハーモニカ系の音でギターにも増して切なく、則竹氏はブラスティック(細い木の棒を束ねたスティックとブラシの中間のようなもの)で繊細なトーンで歌います。ベースは一見ギターかと思うようなフルアコタイプのものを使って、アコースティックな音色のサウンド全体を包み込むようなプレイでした。これがアスリートのベースだそうです。

ここでMCになります。
則竹裕之
紹介されたあと自分でフィルインを短く演奏して会場から笑いをとっていました。
熱海に引っ越し、やっと自宅スタジオがやっと完成して練習に励んでいるそうです。家からは海が見えて今は海水浴のお客さんがいっぱい。「一度是方さんも来て下さいよ。」「行きたいなあー。」仕事で東京に来るときは主に電車を利用し、大垣行きの夜行で帰ったりするそうですが、これが面白いとか。隣のおじさんと「お兄さん煙草吸っていい?いや、お兄さん煙草嫌いそうだから」「僕も吸いますから」などいろいろな話をしたり。この日も中央線で高円寺まできたのですが、うとうとと寝ていて顔をあげると緑色の物体が。8等身の10代の女性が目の前に立っていたそうなんです。「どこを見ていいのかわからなくて困りました。」

須藤満
2月にソロライブで東名阪ツアーをしたときに、ソロアルバムのための録音をしていたそうです。しかし機材の関係で神戸でしか音が録れなかった。是非入れたい曲で、ギターの大橋勇氏のマイクが1本になってギターはモノラルでの録音にになってしまった!!!「うわあああ、もったいない・・・それだけの理由で?ボツ?」「ええ、でも大橋君がモノラルでもいいって言ってくれたんですよ。」まだ発売時期は未定だそうですが、ソロアルバムの準備が進んでいるそうです。「そうだ、是方さんOTTOTRIOのベース、この前櫻井さんにとられちゃって。(野音ライブレポをご参照ください)やらせてくださいよ。いいな、のりちゃん。」「僕は・・・ねえ。(則竹氏は安藤さんを口説いてOTTOTORIOのドラマーの座を奪ったのです)」「あっそうか・・・。自分からお願いしないとダメなんだよねえ・・・。駒ヶ根の前日リハーサルでOTTOTRIOのベースの方がいなくて是非やりたいってやらせてもらって、あのときは嬉しかったですよ。」などの思い出話もありました。

難波弘之
「焼けましたねえ。色白モチ肌の難波くんが。」「いやあ、沖縄でね、バ・カ・ン・スっていうかリゾートっていうか、してきたからさ」「ふん・・・いいもん」野獣王国で沖縄公演をしたあと、是方さん以外のメンバーは沖縄に残ってリゾートしてきたそうです。是方さん一人は仕事ですぐに東京に戻ったとか。野獣王国はインディーズにもかかわらずCDが5000枚売れて、4人で大喜びしたそうです。9月21日に1年半ぐらいかかってつくった「NEUBEAU IMIGRAT」というプログレのソロアルバムをリリース予定で、「1曲10分、8曲59分っていうすごーい世界なんだよね」と笑っていました。

是方博邦
難波氏が話題に出した野獣王国の沖縄公演のあと、ギタリスト4人でのセッションを行ったそうです。まわりはみんなジャズの人ばかりで、「俺一人ぎゅいーんだったんよ」とのこと。

5 新曲C
ギターは紫の是方モデル、ベースは赤のMOONです。Eマイナー。イントロはタムが印象的なドラムに、ブラスのスッキリした音色から入ります。ロック色が強いイメージとテンポよく進んでいくイメージを合わせ持った曲ですね。シンバルの刻みは8つなんですが16ビート的な印象。難波氏のキーボードソロは「うにうに」という感じがぴったり。ドラムはタムの両手打ちが多く、ものすごくパワフル。この曲ではベースはあまり目立たず、ビシッと裏方に徹してました。。

6 3日前に作ったバラード

ギターはストラト。ストリングスにのせてピアノが入ってきます。力の抜けたしっとりした雰囲気です。エレピソロではリムショットの「スカーン!」という音が冴えます。憂いのある中にもい広がりのある素敵な曲でした。 心を乱すものや辛いこともあるけれど、今日も前向きに歩いていこう・・・そんな気持ちにさせてくれる曲でした。ラストのシンバルのトレモロが宝石の粒のように美しかった・・・。

MC

秋のライブスケジュールの紹介です。

9/6   高円寺ジロキチ KORENANOS
9/21  岐阜県可児市 フラワーフェスティバル
9/22  中津川 たいそう楽器
9/23  飯田CANBAS
<六本木ピットイン 是方6DAYS>
10/8  ギター・バイオリンバトル 
10/9  KORENANOS
10/10 野獣王国
10/11 アクマ・ラジオクラブ 
<京都RAG 是方3DAYS>
10/16 是方・JIMSAKU
10/17 KORENANOS
10/18 ラジオクラブ

また、是方氏は8月16日に杉山清貴の日比谷野音コンサートに参加するという話がでました。「あんまり音を大きくしたらクビになるよ(笑)」とは難波氏の弁。

7 HEART OF EARTH

おなじみライブバージョンの、4拍子で激しいオルガンサウンドから入ってくるイントロ。途中で6拍子になり、メロディが始まります。サビではキーボードで3度下のハモりが効いてました。途中のドラムソロでは、手数の多さよりも楽器を存分に鳴らすといった印象。スナッピーをオフにして、「こんこん」という音色でスネアを叩く場面では洋服の袖がビリビリしました。そのあとクラーベをはじめは等拍で刻んでいましたが、だんだんテンポがあがっていきます。歯を食いしばっての熱演。クラーベの刻みと叩いているフレーズの拍子がだんだん別に聞こえてきます。顔じゅう汗びっしょりで、汗が目に入ってるのでは・・・と思わず心配になるほど。ソロが終わってやっとニッコリしました。
8 DIMENSION TRAVELLER

イントロのベースラインでの鋭いスラップが光ります。この曲では今までで一番いい笑顔で弾いていた難波氏。この曲だとメンバーの表情が対照的なのがどうしても目に入ります。楽しそうに生き生きとメロディや華麗なソロを弾く難波氏。必死な顔の須藤氏、則竹氏。平気な顔の是方氏。変拍子の嵐の曲ですが、このポップで歌いやすいメロディラインは耳慣れると最高に心地よいです。いろんな意味で楽しい曲でした。

9 JUMPIN’ DUCK FLUSH

ポップなロック、と言ったらいいのでしょうか?ベースパターンがとっても印象的でカッコイイ!! キーボードでピコピコした音色のバッキングも面白い!! ドラムはチャイナシンバルで8分の刻みを入れて、とっても賑やかです。ギターとキーボードのソロ回しでは音量もすさまじく、だんだん雄叫びのような轟音の世界に突入。その後ベースソロになります。生きのいいフレッシュな印象。Gの音の連打とスナッピーをオフにしたスネアの伴奏の場面もありました。その後4ビートになり、シャッフルになり、・・・汗びっしょりになりながら目をぎゅっと固くつぶって必死に弾く須藤氏。16ビートに突入し、手の動きが見えないほどの猛スピードのスラップで突っ走ります。ソロが終わると、ソロをとる是方氏と須藤氏が2人並んでエキサイトしてノリまくり!!!難波氏、則竹氏もこの日一番楽しそうな笑顔を見せました。

曲が終わるとさすがに「疲れた・・」という表情で須藤氏が舌を出し、会場からは大拍手でした。演奏終了後の話では、「実は自分から4ビートにしたわけじゃなかったんだけど、何か則竹に4ビートにとられるようなことを俺がやったんでしょう」とのこと。ライブで間があいてしまうと、これだけ弾くと指がしばらく痛いそうです。「家でも弾くんだけど、家でいくら弾いてもライブで弾かないと痛くなっちゃうんですね。」

ENCORE / SAVING ALL MY LOVE FOR YOU

ホイットニー・ヒューストンの大ヒット曲のカバーです。アコースティックギターの幻想的なソロで曲が始まります。ゆったりとしたシャッフルが刻まれるところへギターが懐かしい雰囲気のメロディを歌い、今日の全体的にハード系だった曲で興奮気味の耳を静めてくれました。難波氏のソロはブラス系の音色、そしてオルガンの音色でどこか素朴な感じの空気を保ちます。少ない音数の中で、ギターの一音一音につけられた強弱、音色の変化がしっかりと伝わってきます。シンバルの「チンチキチ チチチ」という刻みも、とってもいい味わい。実はこの曲、あとで伺うまで是方さんのオリジナルだと勘違いしていました。それぐらいしっくり決まったアレンジの演奏だったんです。

狭い会場で、暑いさなかに思い切り熱く盛り上がったライブとなりました。
KORENANOSを聴く度に、野獣王国との違いってなんだろう・・・と考えます。野獣王国とはリズム隊が違うだけなのですから。やはり一番違うのはドラマーの個性でしょう。則竹氏の特色は元気でスッキリさわやか・・・ということになるような気がします。従って、是方氏のレパートリーの中でもロック色が強いものは野獣ではなくてKORENANOSで演奏されることが多くなるのでしょう。本日の1曲目「UNTIL YOU COME BACK TO ME」、3曲目「PINK WOLF」、本編ラスト曲「JUMPIN’ DUCK FLUSH」などはKORENANOSの個性にピッタリの曲目でしょう。そしてそのドラマーの個性とベーシストもまたぴったり合っています。須藤氏のこの日のプレイは、とてもスピード感と力強さがあり、すっきりしていながらどっしりしていました。

さらに野獣王国と違うのは、メンバーの主役度。野獣王国は4人ががっぷり4つに組むといった感じで全員が強烈な存在感を持っています。でも、KORENANOSでは是方氏をドーンと主役に据え、まわりのメンバーはある程度ギターを聴かせるプレイをしています。どちらもそれぞれの魅力がたっぷりありますが、両方を聴くと彼らの魅力がより堪能できると思います。豪華メンバーの演奏を間近に聴けて、大満足のライブでした。





Last update 9/8/97
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