「40歳までにピアノトリオ」の公約を晴れて果たした和泉宏隆

今年2月にT-スクェアからの脱退を発表したピアニスト・和泉宏隆さん。
脱退の理由は「ピアノに専念したい」ということでした。
昨年8月に発売されたピアノソロのアルバム「FORGOTTEN SAGA」でピアノに本格的に取り組み、それからピアノに専念したいという思いが強まったようです。
フェアウェル&ウェルカムライヴで、和泉さんはグランドピアノを演奏していました。
しばらくピアノばかり弾いていたという話でしたが、このときの演奏には「おおっ」と身を乗り出してしまうような新しい魅力がありました。

さて、脱退が発表になって世間が大騒ぎしていた2月に、和泉さんはピアノトリオのメンバー探しをしていました。
ピアノトリオとなると、誰と演奏するかがとにかく重要になります。理想の高い和泉さんですから、思うような人を見つけて本当にトリオが組めるのか、心配もあったようです。
しかし、ある先輩ピアニストの方にメンバーを探していると話したら3人のメンバーを紹介されました。ドラマーは25歳でバークリー帰りの若手、諸藤一平さん。ベースは矢堀孝一さんの「WYSIWYG」などで活躍中で、ベースの手数王とも言われる岡田治郎さん。そしてキーボードも弾ける女性ヴォーカリストはいないかと探していたところ熊谷さんに出会い、あっさりとメンバーが集まってしまいました。「案ずるより生むがやすし」状態だったわけです。「これで世界に出ていける」と思えた和泉さんは、はりきってこのバンドのためにいくつも曲を書いたそうです。


6月6日のライヴを聴いた印象では、まさに「和泉ワールド」が出現していたように思いました。歌うようなメロディーをピアノが弾くバンドです。ジャズなんだけれど、すごくポップな気分もあるというのが和泉さん流。お洒落度、リラックス度の高いサウンドに感じました。全体の3分の2が新曲で、この日が初演という濃いプログラム。残り3分の1はT-スクェア時代の名曲やアルバム「Forgotten Saga」からのピアノソロ、パット・メセニーなどのカヴァー曲ということで、かなり満足度の高い「おいしい」ライヴでした。ちなみにこの日はパーカッションはなし。7月11日のチキンジョージ、8月4日の六本木ピットインではパーカッションも加わるとのこと。かなりゴージャスな雰囲気になるでしょう。
和泉さん自身が、「インストを聴いていると歌が聴きたくなる」タイプであることが、熊谷さんのヴォーカルが入っている最大の理由だそうです。ヴォーカル曲は、東京ではキャロル・キングなどが演奏されましたが、神戸ではさらにシャーデーなども加わる予定。

いずれアルバムの制作も考えているとか。

行こうかどうか迷っている方には、ぜひおすすめのライヴです。(美芽)


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