Michael Brekcer
無伴奏ソロ仮想 Live Report




Michael Brecker (Tenor Sax)

2001.11.7 AVO Sessions, Basel, Switzerland

1月13日にこの世を去ってしまったマイケル・ブレッカーだが、どうしても見たいと思っていたのに結局見ることができなかったライブがある。
それは無伴奏の完全ソロ・ライブだ。数年前からヨーロッパで数回程度のみコンサートが行なわれており、機会があればヨーロッパまで出向くか、もしくは是非日本でのコンサートが実現してほしいと思っていた。

その見たいと思うきっかけとなった2001年11月7日にスイスのバーゼルで行なわれたコンサートの模様がヨーロッパの衛星テレビで放映された番組のビデオが手元にあるので、その内容を紹介しようと思う。

このコンサートはバーゼルで毎年11月に2週間ほど行なわれるAVO Sessionsというジャズ、ロック、ポップスのアーティスト達が出演するミュージック・フェスティバルの一環として行なわれたもので、同じ日にはアーチー・シェップ、エリス・マルサリスが出演している。 そこそこ大きなステージで、かなり広いアリーナにテーブルと椅子が並べられている。
ステージ上はソロ・ライブということでマイケルが座るストゥール、サックス用、MC用のマイクがそれぞれ1本づつセッティングされているだけだ。

1曲目は「Tow Blocks From The Edge」に収録されている「Delta City Blues」から幕を開ける。 この曲はアルバムでもintroとして30秒ほどの無伴奏ソロが収録されているし、クィンデクテットの来日公演でもこの曲は無伴奏ソロから始まっていたので、それを聴いている人は、どんな演奏かはイメージできるだろう。
ただし、この日のステージでは、その無伴奏ソロのみで約10分間の演奏が完結している。
テンポのいいブルージーなリフを自分で繰り出して、その上にあたかもオーバーダブをするようにソロをかぶせていくような演奏だ。もちろんエフェクターなどを使っているわけではなく、リフとインプロビゼーションが入り混じったような演奏なのだ。

1曲終わるとMCなのだが、この日のステージではいつになくマイケルのMCが長い。何故かというとビデオで見てもわかるほどに息が上がっていて、すぐには次の曲に入れないようなのだ。それほどまでに集中して吹きまくっている演奏なのだ。

2曲目のコルトレーン・ナンバー「Naima」は「Directions in Music」にも無伴奏ソロで収録されていたものだ。
アルペジオのようなフレーズの塊でコード感を出しながら叙情的なソロを進めていくのは感嘆するほかはない。

3曲目のファンキーでブルージーなタッド・ダメロン作曲の「Hot House」ではリズム楽器がない中しっかりとグルーヴを感じさせる演奏で盛り上げていく。人並みはずれたタイム感を見せ付けるような演奏だ。
MCでの若い頃のメキシコに行って、メキシコのビートルズと言われるバンドの仕事をしていた話もおもしろい。

アンコール前の最後を締めるのはリーダー・アルバム、ブレッカー・ブラザーズ両方のアルバムで取り上げていたマイケルお気に入りの曲「African Skies」だ。ここでの高速アルペジオを連発する演奏はもう壮絶というしかない。

アンコールを含めて50分程度のステージなのだが、あまりの凄さにビデオを見ただけでも脱力感に襲われるような演奏だ。

この演奏をもう生で見る機会がなくなったしまったのは、あまりに悲しい。
せめてこのソロ・ライブの演奏を正式音源としてCDもしくはDVD化して欲しいと思うのだが、レコード会社の方いかがなものだろうか? (橋 雅人)

Set List
Delta City Blues
Naima
Hot House
African Skies
Round Midnight(アンコール)




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