プリズム 再発プロジェクト インサイド・ストーリー



第4回 作業過程 Part 3(未発表音源編)

小澤 芳一氏
プロフィール
1962年東京生まれ 19歳からアルバイトでディスクユニオンに勤務、その後タワーレコードに14年間勤務し本格的に音楽制作を開始。そこで深町純 & The New York All Stars Liveの初CD化を手がける。
2001年よりユニバーサルミュージック/ユニバーサル-ポリドールにて邦楽制作を担当。

さてスタジオ・アルバム、ライブ・アルバムとリリースされた音源が入ったマルチテープは前回までで全てアーカイヴしましたが、実はあと4本謎のマルチテープがありました。リール117番から120番の4本です。CUE SHEETもありませんでした。箱には1978年9月24日、ライブ、とだけ記されています。しかしリール97番のマルチテープの日付とダブっています。さすがにライブとスタジオを同日に行うなんてことは有り得ません。とにかくテープを回す事にしました。まぁライブと書いてあるんだから、どこかのライブである事は間違いない、さて聴きながらエンジニアの北川さんの過去の記憶を呼び戻してもらう事に。でもマルチテープを回すライブなんてかなり大事(おおごと)ですので覚えてないわけが無いはず。なのに憶えていない。早々和田アキラさんにも連絡を取りましたが、デビュー・ライブはマルチを回した記憶があるけど、78年は記憶にないねぇとの返事。当時FMの公開録音等のイベントもありましたから、それかなぁ?などと話ながらこのマルチを全て聴くと、なんと綺麗に30分づつ4本で2時間分のライブが収録されていました。全14曲も。ここで更に混乱したのサードアルバムの曲もすでに演奏されていたからです。そしてこの長さからしてイベントではなさそうです。

とにかく、いつのライブか調べる事に。しかしスタッフでは分からないので、HPを探る事にしました。その中で和田アキラレコーディングリストと言う膨大な資料をネット上で公開しているページを見つけました。「川橋邦彦ホームページ 音盤考古学研究所」(www.blk.mmtr.or.jp/~kwhs9215/index.html)これは何か手がかりになるかもしれないので、メールにて問い合わせをしました。さすがにすぐの回答にはなりませんでしたが、今回の再編集盤では沢山の資料を提供頂いて、本当にお世話になってしまいました。川橋さんの周りの協力を仰ぎつつ調査は続きました。何日かが経ち、とにかく自力でネットサーフをしながら捜し求めていたら、なんとまたまたHPを発見。一度リンクが張られていて見たことがありましたが、全て見たわけでは無いHPにたどり着きました。もう一度探索しようと思い1ページづつクリックをしていくと驚きの1ページが!!「杉野講堂の思い出」というタイトルの元にそのライブの内容がびっしり書いてありました。「ヤマケンの愚者の楽園だより」(http://plaza6.mbn.or.jp/~musicpc/)と言うページです。このページを読んで、曲紹介の記述がマルチテープと合致していたのです。音源を聴いた和田さんでも思い出せなかった事が、ここで全てが判明しました。迷わされた日付は1977年の間違いであると判明したのです。このマルチテープはデビューライブを記録した1977年9月24日の東京目黒は杉野講堂での貴重なライブだったのです。誰もが忘れていた、正に発掘!幻のライブです。 ヤマケンさんの違法行為が今となっては救いの情報でした。立場上(笑)言いますが皆さんライブ録音は止めましょうね!

ではこのマルチテープを番号順に検証していきます。

「リール117番」

静寂の中からメンバーを拍手で呼び求めるお客様、登場と同時に拍手もやみ、ギターのチューニングが聞こえます。BGMに波の音とカモメの鳴き声が会場一杯に響いています。“MORNING LIGHT”がオープニング。78年のライブに比べるとかなり甘い演奏ですが、若々しさを感じる蒼いイメージです。この曲に関してはアレンジも完璧とは言えない、でも個々の力量はしっかりしていると言う印象です。

曲間なしの連続で“CYCLING”に突入。何でこの曲が78年には演奏されていなかったか不思議。出来も良いです。さて次ぎはいきなりカヴァーを演奏です“FRED”トニー・ウイリアムス&ニュー・ライフタイムの曲です。続いて“VIKING”曲紹介のMCを聞くと「U」とは言っていないです。演奏終了後テープは終わります。

「リール118番」

“DAY DREAM”続いて“SHAKE YOUR HEAD”2曲とも後にスタジオ・アルバムで発表されますが、アレンジはほぼこの時点で出来ています。
 “MIDNIGHT TANGO”この曲はAL DI MEOLAのカヴァーです。次ぎはMCで“BENEATH THE SEA”と紹介しておきながら、間違いでしたと笑いを誘う!曲は“風 神”です。イントロが違い、入りの部分もまだ未完成と言う状態。ギターとサックスのユニゾンだったり、ギターソロはまだまだしっくりこない感じだったり。この曲は途中でテープが終わってしまい全貌が分かりません。

「リール119番」

続いて“DANCING MOON”結構良い演奏しています。ギターの絡みと言い、サックスと言い。そして先ほどタイトルを間違えた“BENEATH THE SEA”です。イントロ後のギターのフレーズが全然違いますがその後戻ります、和田さん弾きまくりです、和田さんはこのタイプの曲が一番しっくり来るのかもしれませんね。キーボードソロもまだまだしっくりこない感じ。演奏後メンバー紹介がありました(テープは途中カット)
幻想的なキーボードが奏でられ、エレピのソロ演奏がされ“PRISM”に突入。演奏終了と同時にテープは終了。

「リール120番」

“LOVE ME”から始まります。最後曲終わりで“TORNADO”のイントロとクロスフェードしてそのまま曲に入ります。ほぼレコーディング通りの演奏。1回テープは止まっています。ギターのチューニングを和田氏、森園氏ともに そして最後の曲ですがこれは今だかつて聞いたことが無いので未発表曲だと思われます。

ベースのチョッパーを合図に始まります、アップテンポの和田氏のカッティングに森園氏のソロ、キーボードソロと続きます、和田氏のソロフレーズはアラン・ホールズワースを彷彿とさせる感じ。あっという間に5分くらいで終了し、アンコールの拍手が有りつつも全てが終了します。

と言う内容で、ポリドールが所有する全てのマルチテープのアーカイヴが終了しました。いかがでしたでしょうか?最後に紹介したライブはいつの日か商品化して皆様にもお届けしたいと思っています。

次に続く

by 小澤 芳一
ユニバーサル ミュージック


第1回第2回第3回
Prism Index Page



Copyright  by 2003 Cyberfusion
Special thanks to
Universal Music Japan