David Benoit & Russ Freeman「The Benoit Freeman Project 2」Peak Records (JLCJ-1002) 2004 - U.S.A.  

David Benoit: piano, Fender Rhodes and Yamaha Motif 8.
(David Benoitはつい最近Russのレーベル、Peak Recordsと契約。)
Russ Freeman: guitars, and guitar synth.
Vinnie Colaiuta / Peter Erskin: drums. Luis Conte: percussion.
Dave Carpenter / Byron House: bass.
Chris Botti: trumpet.
David Pack: vocal.
(David Packは8月24日に自身のソロアルバムをPeak Recordsから発売予定。)
Vince Gill: vocal.
The Nashville String Machine


  ○骨太いストレート系  ●明るく爽やか系  ○骨太系と爽やか系の中間 
  ○R&B                 ○ブラック系         ○歌物・NAC/AOR 系       
  ○ラテン系(□ブラジル系  □サルサ系        □カリプソ系)           
  ○ユーロ系            ○JAZZ系          ○JAZZとFUSIONの中間系   
  ○ブルース系          ○ロック系        ●スムース系

1994年のこのコラボレーションは当時かなり話題になったことを覚えている。かのAdlib誌は2回に分けて特集を組んでいたし、その後続いて発売されたDavid Benoitの新作の記事にも、さりげなく友人ミュージシャンとしてRuss Freemanが顔を出していた。確か、渡辺貞夫主催の夏のコンサートシリーズに2人揃って出演したのも、このあたりではなかっただろうか。

気が付くとあれから10年が経ってしまった。Contemporary Jazz界で話題になったアルバムながら、そのあとに続く作品がなかなか出来なかったのも、人気者の2人故とでも言おうか。そんな、お互いのアルバムに顔を出すことさえ希だった2人が、再び一緒に音楽作りをすることになったと昨年偶然Russ本人から聞いた時、私は密かに小躍りしてしまった。いや、私以外にも、このアルバムの発売予定を知って、そんな気持ちになったファンも多かったはずだ。

さて、今回も前回のBenoit/Freeman Projectで基本となっていた、ピアノとギターを中心としたリリカルな音作り自体に大きな変化はないと言っていいだろう。Davidの情緒的なサウンドと流れるようなメロディ。それに絡むのが、Russの小気味よいギターで、それはある時は抜けるような明るいイメージを、さらにある時はかげりを帯びた切ないイメージを描き出していくのだ。バラエティに富んだ今のSmooth Jazz界においては、確かに決して真新しいサウンドではないのかもしれない。しかし、そこには、この2人だけにしかできない独特のテイストがあることも間違いないのだ。

全体のサウンドに、前作との大きな違いはないと言いつつも、Smooth Jazz 界の貴公子トランペッターChris Bottiの参加はやはり大きなポイントだろう。4曲目の「Club Habana」ではラテン調のリズムに乗って郷愁あふれるノートを響かせ、8曲目の「Struttin'」ではRussのギターと呼応してジャジーなサウンドを聴かせる。前作では「サックスのように性格の強い音はあえて自分達の音楽からはずした」と語っていたDavidとRussだが、2人のテイストを残しつつさらに「厚みのある」音に仕上げるのには、穏やかだが力強さがあるChrisのトランペットは最適だったようだ。

Smooth Jazzのアルバムでは決まって話題になりやすいVocal曲ももちろん2曲入っている。前作の「When She Believed In Me」では、Russ達はあえてJazz/Fusion系ではないKenny Logginsをピックアップ、そのKennyが伸びのある素晴らしいファルセットを聴かせてくれたことはいまだに印象深いところだろう。そして、今回のアルバムでまず登場するのはFusionファンからすると馴染みのDavid Pack。3曲目の「Montecito」で美しいとハミングとファルセットを聴かせてくれている。加えて、意外性でDavid Packをしのぐのが、Country/Blue Grass SingerのVince Gill。その彼が、かなりメロー&ジャジーでレトロ調の「Two Survivors」を歌っているのには驚かされる。DavidのピアノとRussのギター、それにオーケストラとあいまって、「Two Survivors」はアルバムの中でもかなり個性の強い曲に仕上がっている。

アルバム全体を通して聴いてみると、クラシカル調の優しい曲あり、ラテンのリズムがぴりりと利いた曲あり、ファンキーなR&Bの雰囲気を取り入れた曲ありと、長年のDavidとRuss双方のファンが充分に楽しめる構成になっていると言えよう。もちろんアルバムのアクセントとなるヴォーカル曲も聴き逃せないわけで、前作に馴染みのない方々も、ぜひこのアルバムで彼ら独特のテイストを楽しんで欲しいところだ。

最後に、個人的に好きな曲をあげるとすると(かなり迷うところだが)、2人のコンビネーションが楽しめる、まさに「Benoit/Freeman Project」らしい1曲目の「Palmetto Park」、David PackのヴォーカルとRussらしい転調が気持ちよい3曲目の「Montecito」、Davidの美しいハーモニーにRussのメロディ、Chrisの伸びのあるノートがラテン調のリズムに乗って流れる4曲目の「Club Havana」、ダンサブルなリズムにDavidのピアノとRussのギターが気持ちよく絡む6曲目の「Samba」、クールなベースの音で始まりDavidのソロとラストのRussのソロが印象的な9曲目の「Stiletto Heels」あたりだろうか。

おっと、但し初めてアルバムを聴く際はぜひスキップせずに1曲目からじっくりとどうぞ。10曲目の「Waiting For the Stars To Fall」を聴きおわる頃には、「David Benoit」でもなく「Russ Freeman」でもない、「Benoit/Freeman Project」の音色が鮮やかに耳に残っているはずだ。(まい)

   
Slow                     Speedy
Light                     Heavy
Mellow                     Hard
Lyrical                     Cool
Melodious                     Out of melody/code
Conservative                     Progressive/Tricky
Ensemble                     Interplay